「人とコミュニケーションを取るのが下手」「空気を読めなくていつかトラブルにならないか心配」という困りごとは、放課後等デイサービスで働いていると一番よく聞く相談内容です。
これは発達特性を持つ人の、人の気持ちを想像するのが苦手ということに起因します。
そういった人には、「こういう場面ではこうする」というパターンをまずは覚えてもらうのが良いでしょう。
暗黙の了解を学ぶ為に使えるお題を10個用意したので、支援者や保護者の方はぜひ療育を行う際の参考になさってください。
教える上で気をつけるポイント
間違っていても叱りすぎない
先述した通り、ASDなどの発達特性を持つ人は、相手の気持ちを考える事や空気を読む事が苦手です。
本人に悪気はなく、感じた事を口に出したり行動に移したりしています。
例えば勉強をしている時に答えを間違えて叱られたらどのように感じますか?
間違えるたびに叱られると「わざとじゃないのに」と思ったり、
自分に自信をなくして自己肯定感が下がってしまうことでしょう。
なのでそういった特性を理解し、叱るのではなくどのような行動をすれば良かったかを教えたり、
相手がどう感じたかを代弁してあげてください。
理由も併せて教えていこう
大人なら常識として分かる事でも、発達障がいの人や子どもにはその理由がわかりません。
びっくりするような言動をしても、本人には何の悪気もなかったりするからです。
(理由がわかっていても、衝動性や自分優位な特性から行動に出ることもありますが、今回は理由の理解が苦手な方を対象にしています。)
発達障がいを持つ方が社会で円滑に過ごす為に必要なのは、『自分の中の答えを増やすこと』です。
場面と答えだけでなく、そうしないといけない理由も併せて教えてあげてください。
暗黙の了解に関するお題
①電車や図書館など公共の場では○○○○○を出さない
答えは「大きな声」を出さない。
公共の場とは、いろんな人が利用する場所。他にはバスやお店などがあります。
そういった場所でお話をする場合は、隣の人に聞こえるくらいの大きさで十分です。
大きな声でおしゃべりしたり、笑ったりしないようにしましょう。
②友達との会話の○○を守る
答えは「順番」を守る。
友達や先生、お父さんお母さんなどが話しや電話をしているときに「ねぇねぇ、ゲームしてもいい?」などと話しかけると、相手は困ってしまいます。
また、相手の子が喋っている途中で、「僕はね・・・。」などと割り込むのもマナー違反です。
相手が一通り喋り終わってから自分の話を始めるか、
「今いいですか?」と相手に確認を取るようにしましょう。
③他人に対して◯◯◯すぎない
答えは「近づき」すぎない。
例えば、電車の中に自分ともう一人しかお客さんがいないとき、そのお客さんの隣に座ったりすると、
相手の人はびっくりして怖くなってしまったり、「どうして他にもたくさん座る所はあるのに、ここに座るの?」と、嫌な気持ちになります。
人混みじゃないときは、他人との距離は1mくらい(腕を伸ばしたくらい)の距離を取りましょう。
列に並ぶときも、家族ならすぐ隣や後ろでも良いですが、知らない人の場合は少し距離をあけて並びましょう。
④プライベートな事は◯◯しない。
答えは「詮索」または「指摘」しない。
例えば、スーパーで買い物をしてレジに並んでいる時、前の人が半額シールのついた商品ばかりかっていたとしましょう。
それを見ておもしろいと思っても「お母さん見て、あの人半額シールのついた物ばっかり買ってるよ」などと、声に出したりしないようにしましょう。
前で並んでいた人からすれば、「別にいいじゃん!ほっといてよ!」と嫌な気持ちになります。
プライベートというのは、個人的な事という意味です。
例えば好きな先生に対して「どこに住んでるの?」「彼女いるの?」などはプライベートな事です。
自分は聞かれても嫌じゃないことでも、プライベートな事を話したくない人もいるので、
お話をしたい時は個人的な内容にならないように注意しましょう。
例えば、「好きな(嫌いな)食べ物は?」や「好きなアイドルいる?」などはプライベート過ぎず、聞いても大丈夫な話題です。
⑤大事な話しの時は◯を見て話しを聞く
答えは「目」を見て話しを聞くです。
目を見るのが苦手な場合は、鼻でも構いません。相手の方を見ることを意識しましょう。
何かを説明したり、質問に答えてるときに、聞いている人がよそ見をしたり、
遊んだり、別の事をしていると、話しをしている人は「どうして話しを聞いてくれないの?」と
嫌な気持ちになります。
そして、そういう相手には「もう親切にするのをやめよう」と思う人もいるかもしれません。
相手の表情を見て、真剣な表情の時は黙って話しを聞く。
楽しく雑談をしているときは、聞いている方も笑顔で聞くなど、相手の表情をよく見て、
どのような態度をすれば良いかを考えましょう。
⑥失敗は◯◯◯◯教える
答えは失敗は「こっそり」教えるです。
失敗はあんまり人には知られたくないもの。みんなにバレるように間違いや失敗を指摘すると、
相手の人は嫌な思いや恥ずかしい気持ちになるかもしれません。
例えば
・ズボンのチャックが開いててパンツが見えている
・鼻毛が出ている
・歯に青のりがついている など
こういうのはみんなに聞こえるように言ってしまうと、相手は怒って嫌われてしまうかもしれません。
教える時はこっそりと教えてあげましょう。
⑦場所や状況にふさわしい◯◯を選ぼう
答えは「服装」です。
結婚式ではスーツやドレスのようなキレイな服装。
お葬式では喪服を着るように、場所に合った服装選びをしましょう。
家ではジャージなどリラックスできる服装でも良いですが、誰かとお出かけする時などは、
「だらしない」と思われないように、ゆるすぎない服装を選びましょう。
わからない時はお家の人に「◯◯に行くんだけど、変じゃない?」などと聞くのも良いでしょう。
⑧嬉しくなくてもお土産やプレゼントを受け取ったら◯◯しよう
答えは「感謝」しよう。または「お礼」しようでも正解です。
誕生日などに友達からプレゼントをもらったとき、いらない物をプレゼントされることがあるかもしれません。
心の中で「いらないな」と思っても、相手には「ありがとう」と伝えましょう。
もしも「こんなのいらない」など言うと、相手はとても悲しい気持ちになってしまいます。
相手はプレゼントを贈る相手の為に大切なお金や選ぶ時間を使ってくれています。
もしプレゼントがイマイチだったとしても、そのことに感謝をしてお礼を言うことが大切です。
⑨お土産やプレゼントを贈るとき◯◯は言わない
答えは「値段」は言わないです。
お土産やプレゼントを贈るとき、「これ高かったんだ!」や「5,000円もしたんだよ!」などと伝えてしまうと、
プレゼントを貰った人は「お金を使わせて申し訳ないな。」「受け取りづらいな」「何かお礼を用意しないとダメかな」などと、嬉しくなくなってしまいます。
せっかく相手を喜ばせようと思ったプレゼントなのに、そんな風に思われてしまってはもったいないので、プレゼントを贈るときは「おめでとう」などと、相手が喜ぶ言葉を言うようにしましょう。
⑩他人の〇〇は守ろう
答えは「秘密」です。
例えば、自分だけに教えてくれた内緒の話を、いろんな人にベラベラとしゃべってしまうと、
喋られた人はとてもショックを受けたり、怒ってしまいます。
秘密の離しじゃなくても、「◯◯さん、△△くんと付き合ってるんだって!」や、
「体重が5キロ増えたんだって!」など、プライベートな話はむやみにいろんな人に話さないようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
暗黙の了解や空気を読む事を求められる場面は他にもたくさんあります。
例えば「プライベートな事って他にどんなものがあるだろう?」と、クイズのように楽しみながら考える機会を作るのもオススメです。
また、暗黙の了解について知る事ができる80セットのカードがついた本もあります。
こういった本で学ぶのも良いでしょう。
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